あれから1年
末弟が旅立ってから早くも1年。その翌日、わが家に居着いた子猫が、見事に成長しました。昼でも光る目は、怪しい妖気を発しているようです。
生後ひと月あまりとおぼしき子猫が保護され、縁あってうちにやってきた日、その時点ではまだ弟の最期を誰も知らないままでした。子猫は野良だったにもかかわらず、直ぐに母の膝で丸くなり、安心したようにくつろぐのでした。不思議な猫もいたものだと思いつつ、1年半前に行方知れずになってしまったトラ猫と比べるのでした。
末弟の孤独死を知ったのはその翌日のこと。しばらくはその事実を母に告げることができませんでした。思えばどれほど子猫が死の悲しみを和らげてくれたことでしょう。
今でも私たち家族は末弟が自分の身代わりとして、母のために遣いによこしたのだと信じているのです。