荒川のハクチョウ(7)
ミゾレ交じりの雨の中、久しぶりに荒川のハクチョウ越冬地を訪ねた。
今年は行政による給餌が中止されている。
現金なもので今月初めに訪れた際、数百羽はいたであろうオナガガモは一羽もいなくなっていた。
が、見たところ、コハクチョウたちはあちこちに散らばりながらも、まだこの場所を離れていない。
しかし、気まぐれな写真愛好家や野鳥愛好家の与えるエサではとてもハクチョウたちの食欲を満たすことは不可能だ。
もともと荒川中流域の川底には藻がたくさん付着している。また川原にも様々な植物があり、それらの中から適したものを食して飢えをしのいでいるようだ。
中州というには小さいが、それでもいくらかの植物がある。
以前見かけた家族集団は川原で草を食べていた。この川原にはアブラナ科の植物も自生している。そろそろ若芽が伸び出す頃だ。それらをハクチョウたちが食するのかどうか知らないが、食べたらきっとうまそうだ。
水中の藻を採るため、首元まで水中に突っ込むことを繰り返す。よく見ると、首から先は水中でせわしなく動いている。
それでも川底まで届かないときには上体を逆さまにし、首を伸ばして何とか採食する。
けして清らかとは言えない荒川の水。生活雑排水の影響か、泡立つ水面。
コハクチョウの下腹部だ。肛門の位置が良く判る。
食後、休息後、着水後などによく見かける羽ばたき。ほ乳類が伸びをするようなものか。グルーミングと共に多くの水禽類に欠かすことのできない行為だ。
そろそろハクチョウたちは北への渡りの準備に入らねばならない。
以前の観察では2月半ばから日中幾度も川の上空を旋回し、飛行訓練ともいえる行動を繰り返していた記憶がある。
ハクチョウたちが無事に北への渡りを遂げ、今年の秋には再びこの地へ戻って来ることを願う。
その時は若いハクチョウたちのペアが新たな家族を連れてやって来て欲しい。
傍観者の僕が言えた義理ではないが、10年以上の歳月を費やし、多くの人たちの努力でこの荒川がハクチョウの越冬地として定着してきたのだから。その人々の思いを無駄にしないためにも。。。