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奥武蔵に生きる写真家の表現と日常

2005年、夜明け・武甲山・埼玉

正月元旦、ふるさと・奥武蔵の主峰「武甲山」を遙拝すべく、

未明の林道を峠まで走った。

昨日(大晦日)降った雪が全てを覆い隠し、辺りは太古の様相だ。

凛とした空気感の中、今年最初のシャッターを押す。

願いと感謝を込めて祈りの念で撮影に臨むこと。

どうやらそれが私にとって究極のテーマとなったようだ。

 

武甲山は全山が石灰岩でできている。

果てしなく遠い昔、この地は海の底だった。

夥しい珊瑚や生物の死骸が気の遠くなるような時間を経て、堆積し、

圧迫、隆起して山となったという。

そして今、石灰岩の山はセメントの原料として削られ、

情けないほど小さくなってしまった。

 

山を剥ぎ取り、大東京は繁栄する。

そのうち列島は逆転して、平野部のビルから山間部を見下ろすことになるだろう。

それ自体非難する気はないが、

飽くなき欲望と追求の果てに訪れるものがけしてパラダイスとは限らない。

無言のまま、武甲山は私たちにそう語りかけている。

 

2005.1.1 Canon EOS5 70-200mm F2.8L RVP100